タイの消費者の成長する都市での生活が、インスタント加工食品の需要を加速させています。国の都市化に直面しているタイ人の間でコンビニエンスストアの需要が増しており、メーカーにとって主要経路のターゲットとなることが確実視されています。ジェンス・カストナーは東南アジアでの利便性の需要の増加に注目しています。
タイの生活の変化が背景となり、タイでの利便性の需要は伸び続けています。
無秩序なバンコク郊外の分譲マンションに住む人口の割合が過去最大となり、農村地域は産業クラスターへと変化を遂げ、交通渋滞が悪化し、より多くの家族が家の外で働くようになるにつれて、インスタント加工食品の選択肢の需要が高まっています。
例えば、市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルのイギリス拠点は、インスタント食品の小売価格が前年比10%上昇し、7.4バーツ(約25円)になると予想しています。ユーロモニターは、2015年のインスタント食品分野で1位2位を占めたタイの会社チャルーン・ポーカパン・フーズ(CPF)とS&Pシンディケートに注目しています。初めは醸造会社だったタイ・ビバレッジ(タイビブ)とシンガ・コーポレーションも、インスタント食品業界の主要企業となっています。
「調理する時間が無いので、調理済み商品や、冷凍食品、無菌製品がタイ中のコンビニにあるのです」と、チェンマイ大学 農産学部のピチャヤ・プーンラープ助教授は言いました。「冷凍か無菌パックの商品は、消費者は購入後にお店のスタッフに電子レンジで温めてもらうようお願いできます。」
プーンラープさんはタイのコンビニで販売されている最も人気のインスタント食品として、ミントの焼きチキンとライスや、焼き飯、ワンタンスープ、ニンニク炒めと唐辛子の豚肉とライス、焼きビーフン、カレーライスを挙げています。そして、ハンバーガーやピザなどのアメリカンスタイルのファストフードは子どもたちやティーンの間で人気な一方、15〜50歳の年齢層は寿司やラーメンなどの日本式の調理済み食品を好んでいるようです。
ユーロモニター・インターナショナル シンガポール拠点の上級リサーチアナリストであるエミル・ファジラは、外食産業の発展がインスタント食品分野の穴を埋める動向を見せていることを指摘しています。「多くの新しい飲食店が2015年に開店し、多くのタイ人に外国の料理を食べる機会が増えたため、伝統的な料理の小休止として即席食品を選ぶことがあるようです」と彼女は言います。
インスタント食品のタイでの成功はコンビニの成功にも直結しており、昨年10月に公開されたタイの食品業界に関するミンテル・レポートによると、コンビニ店舗数は今や30,000店にものぼり、1店舗につき5,500人の顧客がいるとのことです。バンコクのシラパコーン大学の調査によると、食品を販売するガソリンスタンドの店舗も増えているそうです。一方で、CPFは即席食品をセブンイレブン8,500店舗とCPフレッシュマート700店舗に出荷しており、タイの調理済み食品の最前線として絶大な注目を集めています。
タイでの利便性の分野の成長は、即席食品に好機を与えただけではありません。ニュージーランドの乳業の巨大企業フォンテラも、国内での成長計画の核としてコンビニを見ています。
タイでフォンテラのブランドビジネスの代表取締役を務めるポール・リチャーズさんは、「コンビニ業界がタイの小売産業の土台であることに疑いはありません」と言います。ニールセンが出したデータを参照すると、タイの日用消費財の売り上げの4分の1をコンビニが占めていると、リチャーズは言います。「私たちはこの業界で強力なブランドを持つことによって、乳製品の栄養と利便性の需要が増えている大きな街や観光地に販路を広げることを可能にしてきました。しかし、販路はコンビニに移りましたが、消費者は変わらず品質や多様性、高級ブランド商品を求めています」リチャーズは言います。
>タイで有名なコンビニ「セブンイレブン」を紹介します。
https://www.7eleven.co.th/
リチャーズは、フォンテラが「新メニューや革新的な乳製品のソリューション開発のために主要なコンビニエンスストアと提携している」と説明し、グループの外食企業であるアンカー・フード・プロフェッショナルズ、大人向けの牛乳のラインであるアンレン、母子向けのブランドであるアンマムを例に挙げました。「私たちのアンカー・フード・プロフェッショナルズ チームは、現代のタイ人消費者の味覚の変化や、出先で食べられる食事のニーズに応えるために、セブンイレブンと共同でカルボナーラとホットサンドを開発しました。さらに私たちはアンレン・ゴールドUHTとアンマムUHTをセブンイレブン商品として初めて立ち上げ、液体状のアンレンとアンマム製品を入手しに来店する消費者を大幅に増やしました。その結果、アンマムUHTの売り上げは昨年度と比べて48%伸びました。」
タイのコンビニを介する流通経路は、国内でコンビニ事業を成長させ続ける挑戦に貢献することになると、リチャーズは言います。リサーチ・アンド・マーケッツ アイルランド支店の予想を参照し、コンビニの店舗数は2020年まで毎年12%増えると予想されていると、彼は付け加えました。「これは将来の発展のためにわれわれが注目している流通経路です」と彼は言います。
バンコクのカセサート大学 農産学部 梱包・素材テクノロジー学科長のトゥニャルット・ジンカーンは、タイのコンビニ流通の強さは、ハンバーガー店から伝統的な屋台食まで様々なファストフード業界にとって重大な脅威だと主張しています。「即席食品の価格が比較的安めなので、即席食品はファストフードと価格の点で真っ向から競争してしまいます」と、ジンカーンは説明します。「しかしファストフード業界とは異なり、CPFのような即席食品会社は活発な研究開発によって常に新しい即席食品を立ち上げ、テレビやインターネット、チラシを通して宣伝します。」
値段や利便性、材料の健全さ、さらには製造技術に焦点を当てた販売キャンペーンは、屋台食が遅れていて汚染されているという印象を消費者に持たせていると、ジンカーンは言います。「即席食品は一般的にGMP(医薬品製造管理および品質管理基準)で承認を受けた、汚染の心配がわずかもしくは全く無い工場で製造されています」と彼女は言います。
これから即席食品の強みとなってゆくのが、例えばタイ人口6,800万人のうち3,000万人が利用している、爆発的人気のインターネットアプリLINEを介すことです。「タイでは他の東南アジアと比べて珍しく、企業が消費者と繋がるためにLINEを利用しており、地域や海外のセレブをブランドアンバサダーに起用するなどもしています。シンガ・コーポレーションの即席食品ブランドであるスター・シェフのブランドアンバサダーには日本人シェフのかずみ やすじろうが起用されています」と、ファジラは言います。
カセサート大学のジンカーンは、タイの食品産業の即席食品分野は、活発化した研究開発によって年度中期にかなり強力に成長すると見ています。
タイは5月に、国を世界的な食品革新の中心として位置付けるため、パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP:官と民が提携して事業を行う)計画に基づき、バンコクのイノベーションセンターフード・イノポリスを立ち上げました。センターで仕事をする企業は、法人税が8年間免除になり、中小企業であれば税金が10%減額となり、海外の投資家がバンコク・サイエンスパークの一角に土地を所有できるなど、インセンティブを受けられます。
「私たちは企業の政府や大学との調整も手助けしています」とフード・イノポリスの事業開発責任者スチーラ・アーチャロエーンは説明します。
タイ科学技術省によると、フード・イノポリスの参加者は9,000の食品工場、3,000名の研究者、10,000人の食品科学技術科の学生、150の食品研究所、20のパイロットプラント、70大学にものぼります。現在、約45%のタイ食品の輸出が未加工の生鮮食品ですが、省が計画している通りフード・イノポリスが付加価値のあるイノベーションを生み出すことができれば、この割合は減少するはずです。
「フード・イノポリスや、アーントーン県の食品研究開発センターであるワールド・フード・バレーのような計画が立ち上げられたように、研究開発に関する激しい省庁協力が起こっています」とジンカーンは言います。「関係する大学や食品産業の人たちはとても積極的で、沢山のセミナーや投資の仲介イベントが開催されています。私はこうしたイベントは、タイの即席食品の国内および海外競争にとってプラスになると考えています。」
タイ消費者の購買力の増加は、今後も便利な食べ物の選択肢への要求を活発化させ続け、加工食品メーカーにとって絶好のチャンスとなりそうです。